甲州街道沿いに立てられた本地蔵菩薩像は、1805年(文化2年)、尼の妙円(みょうえん)によって建立された石造仏で、俗に妙円地蔵と呼ばれています。頭部を欠損しており、1987年(昭和62年)、地元の有志によって修復されました。
妙円は、俗名を熊といい、武蔵国多摩郡境村新田(現武蔵野市)の農家に生まれました。若くして、金子村(現調布市菊野台のあたり)に嫁ぎましたが、夫が急死したうえ、両眼を失明してしまったことから、出家して寿量妙円と名のりました。
以後、村人のために路傍で鉦をたたいては念仏を唱え続け、集めた浄財をもとに地蔵菩薩像を立てました。それからはこの地蔵の傍らで念仏三昧の日々を送るとともに、村人に頼まれては加持祈祷を行いましたが、妙円の祈祷はよく効き、必ず効験があったと言い伝えられています。
妙円は、自ら予告した日に1日遅れて、1817年(文化14年)10月29日に念仏往生を遂げました。
妙円の生涯は、「南総里見八犬伝」で知られる滝沢馬琴が、その著「玄同放言」(げんどうほうげん)に詳しく紹介したため、当時広く知られるようになりました。
調布市菊野台1-32
京王線柴崎駅から徒歩7分